良質な生地から、世の中に感動を。
1934年創業の川上織物株式会社は、織物が盛んな兵庫県播州地方で「播州織」と呼ばれる織物をつくっています。
播州織は、先に染められた糸を用いて織り方だけで柄を表現する「先染め織物」であり、1792年に播州地方に伝わった織物と言われています。
日本の伝統産業が衰退していく中、播州織も例外ではありませんが、播州織は国内最大規模を誇る産地であり、糸の染め・サイジング・織布・仕上げ加工まで産地内で一貫して行える強みがあります。また、世界の有名ブランドにも多く採用されている織物で、複数ある工程にはプロフェッショナルな技術と知識を有した職人が、メイドインジャパンの品質を支えています。
川上織物では先人たちが培ってきた播州織の品質を守りつつ、世の中に感動を与る良質な生地を生み出していきます。
KAWAKAMI QUALITY
01高い技術が必要なテンセル生地
テンセルは、ユーカリを原料に化学処理で化学変化を起こして製造されたものです。化学変化といっても、石油などで作る合成繊維とは異なり、植物由来の繊維で、極めて環境にやさしいため、近年、エコを推し進めるヨーロッパ諸国では大変注目と評価をされている素材です。
テンセルを用いた高効率な織布は極めて高いノウハウを必要とし、織機で加工する最中の糸切れも多く、その都度機械を停止して糸を繋ぎ直す必要があり、時間と技術を要します。
播州織の織布事業者の中でこのテンセルを使用して、経糸にテンセルの80単糸(※1)を使って織布する技術を有しているのは当社だけです。
※1 80単糸とは、糸の番手(太さ)であり、80単糸は細めの糸となります。細い糸ほど糸切れしやすく、高い織布技術が必要となります。
02高密度で質の高い織物
織物の「密度」は、経(タテ)糸と緯(ヨコ)糸の打込本数で表します。
1インチ(2.54cm)間の経糸・緯糸の合計本数が多いほど高密度になり、逆に少ないと低密度となります。
どちらの密度にもメリットはあり、用途によって使い分けますが、主に高級感やさらっとした触り心地・光沢感などは高密度の方が表現しやすく、アナログ感やふわっとした触り心地・通気性などは低密度の方が表現しやすくなります。(ガーゼ生地などは低密度)
川上織物が得意とするテンセル生地は高密度に向いており、糸の打込本数を増やすことで、シルクのようなやわらかさと光沢感を実現した高品質な織物となっています。
03様々な種類の織物データを蓄積
先染め織物の奥は深く、糸の番手・糸の素材・密度・織組織(※1)・柄などによって、無数の組み合わせ表現ができます。
川上織物では、一度作った織物を細かくデータとして蓄積して研究することで、次の織物に活用して新しいものを生み出しています。
※1 織物の業界で使う「織組織」とは、経糸と緯糸が合わさる組み合わせを表したものです。基本的な組織として、平織・綾織・朱子織という「織物の3元組織」があります。(この他にも無数の織組織があります)
ちょっと特別な織物、播州織。
SPECIAL FABRIC, BANSHU-ORI.
ちょっと特別な理由その1
「200年以上の歴史ある織物」
播州織は、主に兵庫県の多可町と西脇市で織られている先染め織物で、播州産地は糸の染色に適した軟水のキレイな川や、緑豊かな自然に恵まれた地域です。
播州織の起源は、1792年に宮大工の飛田安兵衛が京都より持ち帰った技術を元に生まれたと言われています。
200年以上の歴史を誇る播州織の最盛期は昭和62年で、年間3億9000万平方メートルという桁外れの生産量を記録しています。近年全国的に伝統技術が衰退している中、播州織も例外ではなく、ピーク時と比べて生産量が大幅に減少していますが、播州織がこれまで培ってきた技術は間違いなく現在にも継承されており、今なお世界の有名ブランドにも数多く採用されています。
ちょっと特別な理由その2
「4つの工程を経た付加価値の高い織物」
先染め織物には大まかに分けて「糸の染色」「サイジング」「織布」「加工」という4つの工程が必要となりますが、播州織は、播州産地内で全ての工程が完結できるという強みがあり、各工程のプロフェッショナルが高い技術でひとつの織物を作り上げています。
播州織物は、ひとつの織物を作るのに、たくさんの人の手が加わった付加価値の高い織物と言えます。
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糸の染色
染色工場では、仕入れた糸を大きな釜に入れて、染料を浸し高温で熱して糸一本一本の芯まで染め上げます。
染料の配合から熱す時間など、色の鮮やかさに関わる細やかな配慮が必要な工程となります。
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サイジング
先染め織物は経(タテ)糸と緯(ヨコ)糸の組み合わせによって柄を表現します。
サイジングは、経糸の整糸・糊付けをする工程となります。糊付けとは、生地を織るときに糸を切れにくくするために経糸に糊を付けることです。
糊は最終加工の時に落とされます。
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織布 (川上織物の工程)
川上織物のお仕事は、生地を織り上げる「織布」と呼ばれる工程になります。
織布工場の多くは、商社から依頼を受けて織布する「賃織業」が一般的ですが、近年独自の織物を作り出す工場も増えてきて、川上織物でも賃織業の他に、オリジナルのテンセル生地などを生み出しています。
賃織業の場合は織布のみ担当することが多いですが、オリジナル生地を作る場合、織布工場自ら染色・サイジング・加工の手配を行います。
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仕上げ加工
播州産地では、織りあがった生地は加工場へ運びます。
加工場では、サイジングで付いた糊を落とすのと、生地にあらゆる加工を施すことができます。
加工により撥水性の高い生地や風合い、色味など、様々な変化を加えることができます。
※生地の水通しが必要なものは、サイジングの糊が付いた状態のものです。播州織は基本的に加工を通すため、水洗いは不要なものが多いです。
ちょっと特別な理由その3
「ほとんど色落ちしない」
播州織物がほとんど色落ちしない理由は、染色の段階で糸に何度も水を通し、染まりきっていない染料を徹底的に落とすことで、それ以上色が落ちない状態にするからです。これにより糸の芯まで染まりきるため、色落ちしない高品質な生地となります。